ギックリ腰になったら、「できるだけ動かない」これが正解だと思っていませんか?
もちろん、痛みが強いときに無理やり動く必要はありません。
しかし、「痛いから、何日も寝ていれば早く治る」という考え方には注意が必要です。
急性腰痛の多くは、重篤な病気が原因ではありません。
そして、重篤な疾患が疑われない場合は、長期間のベッド上安静よりも痛みを悪化させない範囲で日常生活を維持し、少しずつ通常の活動へ戻していくことが推奨されています。
つまり・・・「動けばいい」でもない。「動かないほうがいい」でもない。
大切なのは「今の自分にできる範囲で動く」ということです。
ここを間違えると、
「痛い」➡「動かない」➡「動くことが怖くなる」➡「さらに動かなくなる」
という悪循環に陥ることがあります。
だからこそ、「ギックリ腰になったら何をするか」だけではなく、「何をしないか」も知っておく必要があります。
【治らなかったらどうしよう……ギックリ腰の本当のつらさ】
ギックリ腰のつらさは、単純に「腰が痛い」だけではありません。
普段なら何も考えずにできていることが、突然できなくなります。
「ベッドから起き上がる」
「トイレに行く」
「顔を洗う」
「靴下を履く」
「車に乗る」
「階段を上る」
「仕事をする」
「子どもを抱っこする」
「家事をする」
たったこれだけのことが「怖い」に変わってしまいます。
そして、身体だけではなく、心まで疲れていきます。
「また痛くなるかも……」
「一度座ったら立てないかも……」
「腰を曲げたらまたギクッとなるかも……」
そんな不安から、身体をガチガチに固めてしまう。
実は、この「怖さ」も無視できません。
腰痛では、痛みに対する恐怖や「動いたら悪化する」という考え方が、活動量の低下につながることがあります。
だからこそ、痛みを軽視する必要はありません。
でも同時に、痛みを必要以上に怖がる必要もありません。
ここが大切です。
「痛いから動かない」ではなく「痛みを確認しながら、できることから少しずつ戻す」
という考え方を持ってください。
【そもそも、なぜギックリ腰になるのか?】
「重いものを持ったからギックリ腰になった」そう思っている方は多いでしょう。
もちろん、重いものを持ち上げる動作は腰への負担になる可能性があります。
しかし、ギックリ腰=重いものを持ったことが唯一の原因とは限りません。
急性腰痛の多くは「非特異的腰痛」とされ、検査をしても原因を一つに特定できないケースがあります。
身体的な負荷だけでなく、
・普段の運動量
・身体の使い方
・長時間の座位
・筋力
・柔軟性
・疲労
・睡眠
・ストレス
・心理的な要因
など、さまざまな要素が関係します。
例えば、普段ほとんど運動していない人が、
「久しぶりに大掃除をした」
「庭仕事をした」
「急にスポーツを始めた」
「重い荷物を何度も運んだ」
という状況になれば、普段とは違う大きな負荷が身体にかかります。
反対に、普段から身体を動かしている人でも、
「睡眠不足」
「疲労の蓄積」
「長時間のデスクワーク」
などが重なった状態で、急に身体をひねったり、前かがみになったりすれば、腰に痛みが出ることがあります。
つまり、「最後にやった動作」だけを見るのではなく、その動作に至るまでの生活全体を見ることが大切です。
ここを見落としてしまうと、「重いものを持たなければいい」という単純な対策になってしまいます。
でも、それだけでは根本的な改善にはつながらない場合があります。
【腰が痛い=腰が壊れたとは限りません】
ギックリ腰になったとき・・・
「腰の骨がズレたんじゃないか?」
「椎間板が飛び出したんじゃないか?」
「腰の筋肉が切れたんじゃないか?」
と不安になる方もいます。
もちろん、重大な疾患が隠れているケースもあります。
だからこそ、症状によっては医療機関で評価を受けることが大切です。
一方で、急性腰痛の多くは重篤な病気を原因とするものではなく、画像検査を行っても明確な原因が分からないケースがあります。
さらに、重篤な原因を示すサインがない場合、最初から画像検査を行うことが必ずしも治療結果の改善につながるわけではありません。
ここから分かることがあります。
それは、「痛みがある場所=壊れている場所」ではないということ。
だからこそ「痛いから絶対に動かしてはいけない」と決めつけるのも「痛いところを思い切り伸ばせば治る」と決めつけるのも危険です。
大切なのは、「今の身体がどの動作に反応しているのか」を確認すること。
そして「どこまでなら安全に動けるのか」を少しずつ探していくことです。
【ギックリ腰NG行動3選】
ここからが本題です。
ギックリ腰になったときに「良かれと思ってやってしまいがちなNG行動」を3つ紹介します。
-NG行動①-
「何日も寝たきりになる」一番多いのがこれです。
「腰が痛いから、動かないほうがいい」もちろん、発症直後で痛みが非常に強い場合には休むことも必要です。
しかし「何日もベッドから出ない」という状態を続けるのはおすすめできません。
急性腰痛に対する長期間のベッド上安静は、現在では基本的に推奨されていません。
痛みを悪化させない範囲で、できるだけ日常生活を維持し、徐々に活動へ戻していくことが大切です。
例えば、
「トイレに行く」
「食事をする」
「部屋の中を少し歩く」
など、できる範囲の動作から始めます。
もちろん、「歩いたら激痛が走る」という状態で無理に歩く必要はありません。
大切なのは、完全に動かないことを目標にしないこと。
そして、痛みを無視して動くこともしないこと。
この中間を探すことです。
-NG行動②-
「痛い腰を無理やり伸ばす」次に多いのが「腰が硬いからストレッチしよう」
SNSや動画を見ると・・・
「腰痛改善ストレッチ」
「腰を伸ばすだけで腰痛改善」
など、たくさんの情報があります。
だから「ギックリ腰になった」➡「腰が硬いんだ」➡「じゃあ腰を伸ばそう」となってしまう。
でも、痛みがある状態で、無理やり腰を伸ばす必要はありません。
「痛いけど、伸ばしたほうが効いている気がする」という考え方は注意してください。
ストレッチは、目的やタイミングによって有効な場合があります。
しかし、「どんな腰痛でも、腰を伸ばせばいい」わけではありません。
前屈で痛いのか。
後屈で痛いのか。
ひねると痛いのか。
立ち上がると痛いのか。
歩くと痛いのか。
まずは身体の反応を確認することが重要です。
急性期は、「柔らかくすること」より「症状を悪化させないこと」を優先しましょう。
-NG行動③-
「痛いところを強く揉む」
「腰が痛いなら、腰を揉めばいい」
これも非常によくあります。
家族に揉んでもらう。
マッサージに行く。
マッサージガンを当てる。
テニスボールで腰を押す。
「痛いけど、ほぐせば治る!」と考えてしまいます。
確かに、マッサージなどによって一時的に楽になることはあります。
しかし、「楽になった=原因が解決した」ではありません。
ここは非常に大切です。
例えば、
「股関節がうまく動かない」➡「その分、腰が動きすぎる」➡「腰に負担が集中する」➡「腰が痛くなる」
このようなケースだった場合、腰だけを強く揉み続けても「腰に負担が集中する原因」は残ったままです。
だからこそ、「痛い場所だけ」を見るのではなく「なぜそこに負担が集中しているのか?」を見ることが大切です。
【ギックリ腰になったらどうすればいい?】
ここまで読むと、「じゃあ、何をすればいいの?」と思いますよね。
ポイントは、「休む・動く・戻す」です。
【STEP1】まずは無理をしない
発症直後で痛みが強い場合、無理して動く必要はありません。
まずは、一番楽に感じる姿勢を探してください。
「仰向け」
「横向き」
「膝を軽く曲げる」
「クッションなどを利用する」
など、自分が楽に感じる姿勢を選びます。
そして、痛みが強いときは一度しっかり休む。
ただし、「休む=何日も寝続ける」ではありません。
症状が落ち着いてきたら、少しずつ活動を戻していきます。
【STEP2】痛みを悪化させない範囲で少しずつ動く
「動く」といっても、いきなりトレーニングをするわけではありません。
まずは・・・
「部屋の中を歩く」
「トイレまで歩く」
「食事をする」
「短時間立つ」
「長時間同じ姿勢を避ける」
など、「できること」から始めましょう。
そして・・・
「昨日より少し動けた」
「今日は10分歩けた」
というように、少しずつ活動量を戻します。
急性腰痛では、可能な範囲で日常生活を維持することが推奨されています。
【STEP3】痛みが落ち着いたら「身体の使い方」を見直す
ここが再発予防では非常に重要です。
ギックリ腰を繰り返す方は、「また腰が悪くなった」と考えがちです。
でも、腰だけが悪いとは限りません。
例えば、「股関節が硬い」➡「股関節で行うべき動作を腰で行う」➡「腰が動きすぎる」➡「腰への負担が増える」ということがあります。
だからこそ、
・股関節
・骨盤
・胸椎
・肩甲帯
・体幹
・下半身
など、身体全体の動きを見ることが大切です。
【STEP4】腰を守る動作を身につける
日常生活の中で腰を痛めやすい代表的な動作が、「床から物を持ち上げる」です。
例えば、床に置いた荷物を腰だけを丸めて、「よいしょ!」と持ち上げる。
これを繰り返していると、腰への負担が集中しやすくなります。
そこで・・・
股関節や膝を使う。
身体に荷物を近づける。
無理に腰をひねりながら持ち上げない。
など、身体全体を使った動作を身につけていきます。
重要なのは、「腰を絶対に動かさない」ことではありません。
腰も身体の一部です。
大切なのは、腰だけに負担を集中させないこと。
この考え方を持ってください。
【STEP5】痛みが消えた瞬間に無理をしない
これも、ギックリ腰経験者に非常に多いパターンです。
昨日まで痛かった。
でも今日は痛くない。
「治った!」と思って・・・
重い荷物を持つ。
激しいトレーニングをする。
長時間スポーツをする。
すると、「またギクッ……」となってしまう。
もちろん、痛みがなくなることは良いことです。
しかし、痛みがなくなった=身体の機能が完全に戻ったとは限りません。
少しずつ、「日常生活」➡「軽い運動」➡「基礎的なトレーニング」➡「通常の運動」というように、段階的に戻していきましょう。
【最後に】
ギックリ腰は、本当に怖いですよね。
あの瞬間の「またやってしまった……」という絶望感。
仕事や家事の予定が頭をよぎる。
家族に迷惑をかけるかもしれない。
明日は動けるだろうか。
そんなことまで、一瞬で考えてしまいます。
だからこそ、「早く治したい」と思うのは当然です。
でも、焦らなくて大丈夫です。
休むべきときは休む。
無理にストレッチしない。
痛いところを強く攻撃しない。
そして、痛みが落ち着いてきたら、
できることから少しずつ身体を動かしていく。
さらに、「なぜ腰に負担が集中したのか?」を見直す。
この繰り返しが「痛くなったら対処する身体」から「痛くなりにくい身体」へ変わっていくための第一歩です。
あなたの身体は、「痛くなったら終わり」ではありません。
むしろ、ギックリ腰は、自分の身体の使い方を見直すきっかけになることがあります。
「もう二度と、あの痛みを味わいたくない」そう思っているなら、
今日からできることを一つだけ始めてみてください。
それは「自分の腰に、なぜ負担がかかっているのかを知ること」です。
そして、その原因を一緒に見つけたい方は、自己流で無理にトレーニングを始めるのではなく、一度、専門家に身体の状態をチェックしてもらうことも選択肢の一つです。
一瞬ではなく、一生のカラダをつくる。
そのために必要なのは、痛くなった腰だけを見ることではありません。
あなたの身体全体を見ることです。
【注意】こんな症状がある場合は、自己判断せず医療機関へ
今回の記事は、一般的な急性腰痛について解説したものです。
ギックリ腰だと思っていても、別の病気が原因となっている場合があります。
特に・・・
・脚の力が入りにくい
・脚の麻痺やしびれが進行している
・股の間やお尻周辺の感覚がおかしい
・尿が出にくい
・尿や便を漏らしてしまう
・発熱がある
・大きな転倒や事故のあとに強い腰痛が出た
・安静にしていても非常に強い痛みが続く
などの症状がある場合は、自己判断で運動を行わず、医療機関に相談してください。
特に、排尿・排便障害やサドル領域の感覚障害、進行する神経症状などは、重大な神経障害のサインとなる可能性があります。
【あなたの腰痛、「腰だけ」が原因だと思っていませんか?】
ギックリ腰を繰り返しているなら「また腰を痛めた」で終わらせないでください。
もしかすると、腰ではなく・・・
「股関節の動き」
「骨盤のコントロール」
「体幹の使い方」
「下半身の筋力」
「普段の姿勢」
「日常動作」
こうしたところに、腰へ負担を集中させている原因が隠れているかもしれません。
痛みが出るたびに、その場しのぎで対処する。
それを繰り返すのではなく「なぜ痛くなるのか?」を一緒に考えてみませんか?
腰痛を繰り返す身体から「自分の身体を自分で守れる身体」へ。
その一歩を、今日から始めていきましょう。
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